第314章

 望月琛は、去りゆく前田南の背中を名残惜しそうに見つめていた。その華奢な姿が夜の闇に完全に溶けてしまってもなお、彼はそこから視線を外せずにいた。

 アパートに帰り着いた前田南は、整然としたリビングを目にした途端、張り詰めていた糸が切れたように全身の力が抜けた。そのままソファへと倒れ込む。

「このまま泥のように眠り続け、二度と目が覚めなければいいのに」

 そんな暗い衝動が胸をよぎる。なぜなら、一度目覚めてしまえば、解決すべき問題が山積みになっている現実と向き合わねばならないからだ。

 整理しきれない感情の濁流が押し寄せてくる。想像するだけで、心は千々に乱れた。

 長い間ソファに身を沈...

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